株式会社戸畑ターレット工作所
DX推進室 室長 中野 貴敏 様
1980年4月生まれ
福岡県北九州市出身。2010年に株式会社戸畑ターレット工作所へ入社。トヨタ生産方式(TPS)を学びながら、中小企業への改善活動に携わる。現在は、「地方の中小モノづくり企業をチームに」を掲げ、北九州から日本全体へカイゼンの価値を広げることを目指している。
「地方の中小モノづくり企業をチームに」——そんな未来を描きながら、現場の改善と新しい挑戦を続けてきた方がいます。
セールスエンジニアとして海外の製造業の生産設備を立ち上げる事業に携わった経験から日本の製造業の現状に危機感を抱き、トヨタ生産方式とIoT技術の考え方を融合させた独自のカイゼン手法を築いてきた、株式会社戸畑ターレット工作所の中野様。
一人でトヨタ生産方式とIoT技術の普及を試みるも出口が見えずに挫折しかけた時期を経て、イジゲングループとの出会いにより、再び大きな一歩を踏み出していただけました。今回は、中野様が抱くカイゼンへの想い、その転機となった協業、そして北九州から日本全体へ広げていこうとする展望についてお話を伺いました。
危機感から始まった製造業のカイゼン
— 「カイゼン」への想いを、これまでの中野様のご経験をもとにお聞かせください
私がカイゼンに強い想いを持つようになったのは、前職の経験から抱いた日本の製造業への危機感でした。海外を回る中で、製造業の国際的な競争の厳しさを肌で感じました。海外では雇用の流動性が高く、「来月成果が出なければ契約終了」といった世界のため、企業も人もリスクを取って挑戦しています。一方、日本は現状維持に傾き、新しいことへの挑戦が遅れていると感じました。このままでは世界の競争に取り残されるのではないかという不安が、私のカイゼンの出発点です。
その後、戸畑ターレット工作所に入社してからは、必要なものを、必要なときに、必要なだけつくる・異常があったら止める、知らせる仕組み「トヨタ生産方式(TPS)」を学びました。トヨタ九州株式会社様のTPS推進室の方や株式会社デンソー様、九州の自動車産業を支えるサプライチェーン企業と7年間にわたり多くの企業のカイゼン活動を経験し、「中小製造企業でも成果を出せるカイゼン」を模索してきました。
その結果、「ヒト・モノ・カネ」の負担を減らし成果を出す工夫こそが、中小製造業のカイゼンに必要なものと気づきました。自動車部品の製造を手掛ける当社の場合では、産業用ロボットの導入、IoTによるデータ活用、AIを使った予防保全など、スマートファクトリーの実現を目指した取り組みを実施し、成果も得られています。
いま私が強く考えているのは、こうした経験を自社だけにとどめず、北九州の中小製造業全体に活かしていくことです。行政やITエンジニアとのつながりを通じて「みんなで使える仕組み」を広げる構想も生まれました。カイゼンのデータを共有し、地域全体で生産性を底上げすることで、日本の製造業を元気にしていきたいと考えています。
出口の見えない挫折からの転機 同志との出会いが協業へ
— 中小製造業のカイゼンを広める中での当時の課題や迷いを教えてください
IoTデータ活用によるカイゼンを中小製造業で進めようと3年ほど一人で動いていたのですが、「いい取り組みですね」と言ってくださる企業はあっても、実際に活用まで至らないことが続きました。契約やサポートの仕組みも整えきれず、どうビジネスとして成立させるか見えないまま、ボランティアのようになってしまうこともありました。「製造現場のカイゼンを進めるとどう良くなるのか」という価値の伝え方も難しく、「伝え方」のノウハウ不足も大きな壁として感じていました。普及の難しさや支援体制の構築不足で、出口が見えない状態に陥り、挫折した時期もあります。
一人で広めることに限界を感じていた頃、公益財団法人 北九州産業学術推進機構(FAIS)の糸川様に、これまでIoTデータ活用をしてきたイジゲングループの平畑さんをご紹介いただきました。初対面だったにもかかわらず、IoTデータ活用を中小製造業の現場に取り入れる可能性や価値について2時間ほど議論したのは、今でもいい思い出です。
平畑さんは当社のカイゼンの取り組みを「すごくおもしろい取り組みですね。こういうことができる会社は珍しく、他社にも広める価値が絶対にあります」と評価してくださり、自分たちの強みをあらためて認識することができました。一方で、平畑さんも新しい挑戦を模索している時期で、互いの強みを掛け合わせ、足りない部分を補い合えるパートナーになれると確信し、協業することを決めました。
現在は、IoTを活用して製造現場のカイゼン活動を支援するオールインワンサービス「カイゼン丸」をともに進めています。
▶ 協業の詳細については、こちらのプレスリリースをご覧ください
一人でできなかったことをチームで挑戦
― イジゲングループとの協業で起きた変化や効果などがあれば教えてください
最初の変化は、「伝え方」や「発信力」の部分でサポートしてもらったことです。当社は、ものづくり企業のため、発信の仕方や見せ方のノウハウがなく、専門用語が多い堅苦しいような発信しかできていませんでした。イジゲングループのカイゼン丸のデザインや説明動画の制作などを通じてキャッチーに伝えられるようになり、私たち製造業にはない視点を与えてくれました。
さらに、自社で蓄積してきた改善データが「当社のためだけでなく、日本全体の製造業に役立つ資産になる」と気づかせてもらえたのも大きな収穫でした。その価値をどう社会に活かすかは、イジゲングループと協業したことでデータの活かし方を学ぶことができ、IoTを活用して製造現場のカイゼン活動を進めるようになってきたように思います。実際に、イジゲングループは西日本シティ銀行様とのネットワークを持っているため、より多くの中小製造業に広められる可能性を示してくれました。私たちの既存の繋がりにはなかった新たなコミュニティーとのつながりや広め方を担ってもらえるのは、とても心強いです。
今では「地方の中小製造業をチームにする」という共通の目標を掲げられていますし、金融機関や行政を巻き込んだプロジェクト管理の巧みさにも刺激を受けています。何より、一人で悩んでいた頃と違い、「仲間がいるから挑戦できる」という支えを得られたことが、一番大きな変化だと思います。
地方の中小モノづくり企業をチームに
— イジゲングループとの協業を踏まえ、今後の展望を教えてください
これから取り組みたいのは、これまで当社で積み上げてきたカイゼンのノウハウやデータを、自社だけでなく、まずは北九州の中小製造業に役立てていくことです。
IoTやAIを使った不良品予測や予防保全など、私たちが現場で実践してきた取り組みは、まだまだ広げられる可能性があります。特に、中小企業でも「ヒト・モノ・カネ」をかけすぎずに成果を出せるカイゼン手法は、多くの現場で役立つと確信しています。
そのためにも、イジゲングループと一緒に、金融機関や行政と連携しながら「地方の中小モノづくり企業をチームに」というスローガンのもと、仕組みをつくっていきたいと思っています。データやノウハウを共有し合い、みんなで生産性を高めていくことで、日本の製造業全体を元気にできると考えています。
これまでは一人で挑戦して限界を感じたこともありましたが、今は仲間がいて、広める仕組みも整いつつあります。これからは、自社だけでなく、地域や日本全体のカイゼンに挑戦し、製造業の未来を支えてまいります。
編集後記
「製造業のカイゼン」は単なる効率化や改善活動にとどまらず、地域や社会を元気にする大きな原動力になり得ると感じられるインタビューでした。海外での危機感から、戸畑ターレット工作所様での実践を経て、北九州全体、さらには日本の中小製造業へと視野を広げてきた中野様。その歩みは、まさに「挑戦を続ける現場の力」を体現していると思えました。
一人では越えられなかった壁も、イジゲングループとの出会いによって協業が生まれ、「仲間がいるから挑戦できる」という言葉に、協業がもたらす力の大きさを感じずにはいられません。
「地方の中小モノづくり企業をチームに」。このスローガンが示す未来は、きっと北九州から日本の製造業全体へ広がっていくはずです。今回の記事が、その一歩を応援するきっかけとなれば幸いです。
事業内容とビジョン
株式会社戸畑ターレット工作所は、自動車部品の製造を手掛けるモノづくり企業。ロボット・IoT・AIを活用したスマートファクトリー化を進めながら、カイゼンノウハウやデータを地域・日本全体へ広げることを目指しています。