医療法人4U
理事長 伊藤 剛 様
1976年12月生まれ
福岡県嘉麻市出身。2011年に医療法人4Uを設立・歯科医院を開業。「口腔の病気で困らない社会」を掲げ、健康維持を重視する。健康な人も通う歯科医院を運営し、歯科医師に経営・顧客視点を持つよう育成も手掛けている。BIツールを活用し、歯科業界発展と社会貢献に取り組む。
「口腔の病気で困らない社会をつくる」——そんな未来を見据え、治療だけでなく、健康を維持する仕組みに挑戦し続けてきた歯科医院があります。
2011年の開業以来、病気のある人だけでなく「まだ困っていない人」にも通ってもらえる医院づくりを進め、専門性と経営視点を兼ね備えた医療人材の育成にも力を注いできた、医療法人4Uの伊藤理事長。
その理想の実現に向け、次なるフェーズとして取り組んだのが、BIツールの導入による「経営と現場をつなぐ可視化」の仕組みづくりでした。今回は、伊藤理事長が掲げるビジョンの背景、そしてイジゲングループと取り組んだプロジェクトの成果と広がりについて、お話を伺いました。
健康維持を重視した歯科医療を目指して
— 医療法人4U様の事業内容と、業界内での特徴について教えてください
当院は、一般歯科として虫歯や歯周病の治療も行っていますが、最も大切にしているのは、「治療した後も健康をどう維持していくか」という点です。患者様が再び、口腔の病気で困ることがないよう、健康な状態をいかに長く保てるか、そのために歯科医院をどう活用してもらうかを常に考えています。
特徴的なのは、健康な人も通ってくださる歯科医院を目指していることです。多くの歯科医院が虫歯や歯周病といった、病気のある人を対象にしているなかで、当院では今は困っていない人にも「将来困らないために通う」という新しい価値を提供しています。
これは、学生時代に「虫歯治療は根本的な解決になっていない」と感じたことが原体験になっていて、病気を未然に防ぐことこそが患者様にとって本当の幸せにつながる、という信念を持ち続けています。実際、国の健康診断に歯科検診が組み込まれる動きなども出てきていて、当院の方針が社会の流れと一致してきていると実感しています。
歯科はコンビニよりも医院の数が多く、競争がとても激しいです。そのなかで、限られた患者層を取り合うのではなく、健康層という未開拓の市場にアプローチし、最終的には「口腔の病気で困らない社会をつくる」ことを目指しています。
若手歯科医師の育成を見据えたBIツールの導入
— BIツール導入前に感じていた、大きな課題は何だったのでしょうか
一番強く意識していたのは、歯科医師業界における若いドクターの育成です。私自身、これまでに多くの勤務医が独立していく姿を見てきましたが、開業後に経営や社会常識がわからないという壁にぶつかって苦労するケースが多いです。
専門技術には長けていても、社会人としての基礎や、患者様の気持ちに寄り添う視点、経営感覚が身についていないまま独り立ちしてしまう——これは、歯科業界全体の構造的な課題だと感じています。
だからこそ、当院では「現場で働くうちに、自然と社会人としても育っていける環境をつくりたい」と考えるようになりました。そのためには、専門家としての技術を磨く場と、社会性や経営視点を学べる場を両立させる仕組みが必要でした。
たとえば、ドクターの多くは「良かれと思って全部治療すべき」と考えがちですが、患者様が望んでいるのはそこではないこともあります。自分のやりたい治療と求められる治療のギャップに気づくためにも、客観的な視点が欠かせません。
また、指導や評価の場面でも、以前は主観でのすり合わせになりがちで、本人の納得感が得られにくいという課題もありました。「自分は頑張っているのに評価されない」と感じる若手に対して、数字という共通言語を通じて、成長の方向性を明確に示していくべきだと思うようになりました。
さらに、私自身が抱えていたモヤモヤとした想いもありました。「口腔の病気で困らない社会をつくりたい」という理想と、売上や利益といった経営的な数字が、自分の中でどうつながっているのかが、当時はまだ腑に落ちていませんでした。スタッフにも「これはノルマじゃない。理念を実現するための“指標”なんだ」と伝えたかったのですが、うまく言語化できず、もどかしさを感じていました。
だからこそ、「想い」と「数字」をどう橋渡しすれば、組織全体として前向きに進んでいけるのかを考え続けました。その思考を整理していく中で、理念と経営をつなぎ、人材育成の基盤にもなるBIツールの導入が、自然な答えとして導き出されました。
理念と経営をつなぐBIツールの構築で、
人と組織を育てる仕組みを実現
— 取り組まれているプロジェクトの内容と成果について教えてください
私たちが取り組んだのは、BIツール(ダッシュボード)の構築と活用を通じて、理念と経営を橋渡ししながら、組織と人材の成長を支える仕組みをつくることでした。数字を「ノルマ」ではなく「理念に向かうための指標」として捉え直すことに注力しました。
実際に構築したダッシュボードでは、ドクターごとのパフォーマンスが数値として可視化されるようになり、それを元に「なぜこの数字なのか」「どう改善するか」といった対話ができるようになりました。良い結果を出している先生の治療方針やノウハウも、データをもとに組織全体で共有できるようになり、育成のスピードや質も上がったと実感しています。
特に印象的なのは、数字が苦手だったスタッフが、自らその意味を考え、「どうしたらもっと良くなるか」と前向きに向き合うようになったことです。数字が評価ではなく成長の鏡として機能するようになったことで、行動が変わり、考え方が変わり、組織としての強さが増してきていると感じています。
ほかにも、以前は売上の集計を外部に依頼していたため、2ヶ月ほどのタイムラグがありました。今回、日次の売上データをダッシュボードに自動連携できる仕組みを構築したことで、毎日の売上をリアルタイムに把握できるようになりました。これも経営判断のスピードや現場の納得感を高めるうえで、大きな意味があったと感じています。
私にとってこの取り組みは、「想い」と「数字」を結び直すことで、育成・理念・経営をすべてつなげる“基盤”をつくるプロジェクトでした。そして今、その基盤が少しずつ、若手ドクターの未来や業界全体の成長にも広がっていく可能性を感じています。
理念と数字をつなぐ本質的な提案
— イジゲングループとプロジェクトを進める中で、特に印象に残っているエピソードを教えてください
一番印象に残っているのは、こちらが伝えきれない思いや背景まで汲み取ってくれたことです。先にも述べましたが、理念と売上や利益といった経営的な数字がどう結びついているのか、自分の中でずっと整理しきれないモヤモヤがありました。スタッフにも、「数字はノルマじゃない。患者さんに喜んでもらうための“指標”なんだ」と伝えたい気持ちがありましたが、どう言えば伝わるのか、うまく言語化できずに悩んでいました。
そうした中でイジゲングループに相談したところ、こちらの漠然とした想いや課題を丁寧に整理しながら、「数字が理念とどうつながるのか」を一緒に可視化していく方向に自然と話が進んでいきました。単なるツール導入ではなく、本質的な部分に向き合ってくれたその姿勢が、非常に印象的でした。
結果として、「患者満足」「人材育成」「経営判断」の全てをつなぐBIツールという形に落とし込めたことが、このプロジェクトの最大の成果につながったと思います。
BIツールの構築においても、「既存の仕組みを流用するか」「ゼロからつくるか」という判断に悩んでいたとき、イジゲングループは、私たちがしたいこととコストのバランスを冷静に見て、「ゼロから構築をしたほうが、御院がつくりたいダッシュボードが実現できます」と背中を押してくれました。その判断軸に納得感がありました。
理念を実現する“人材育成”と“生産性”の両立へ
BIツールを土台に、未来の歯科医療を育てる
— イジゲングループとの取り組みを踏まえ、今後の展望について教えてください
今後は、歯科医師の教育により一層力を入れていきたいと考えています。今後の歯科業界や社会全体が変化していく中で、単に人を増やすのではなく、限られた人材でも高い質の医療を提供できる「生産性の高い組織」づくりが不可欠になっていきます。
歯科医療は、設備やテクノロジーだけでは成り立たず、最終的には人が医療の質を決めるサービスです。だからこそ、人を育てること自体が、患者さんに良い医療を届けるための本質的な取り組みだと考えています。人が減っても患者満足度を維持しながら、きちんと利益も出せるチームを目指しています。
そのために必要なのが、「良い医療」と「経営的成果」を両立できる医療者の育成です。今回導入したBIツールは、その基盤となるもので、ドクターが自分の成果を客観的に見つめ直し、行動を変えるためのきっかけとして機能し始めています。「売上=治療効率や患者満足度の結果」といった考え方も、自然と根づいてきたと感じます。
さらに将来的には、このBIツールを、若手歯科医師が開業前に経営視点や社会人意識を学ぶ教材のように活用できるようにしたいとも考えています。自院だけでなく、業界全体にとっても意義ある仕組みに育てていけたらと思います。
現在私は、桜十字グループの歯科事業部も担当しており、大きな組織で職人集団である医療者をどうマネジメントするかという課題にも直面しています。今回のBIツールは、そうした将来的な組織運営を見据えた先行投資でもあり、今後のマネジメントにも活かせると確信しています。
最終的には、患者さんに本当に喜ばれる医療を、効率よく、持続可能に提供できる人材が育っていくことです。そして、その育成こそが日本の医療と社会を支える根本になると信じています。
編集後記
今回の取材を通じて強く感じたのは、「理念」と「経営」のあいだにある見えない壁を、丁寧に言語化し、行動に落とし込むことの大切さです。伊藤理事長の「口腔の病気で困らない社会をつくる」という理想は、単なるスローガンではなく、スタッフ育成や仕組みづくり、さらには業界全体への視野にまでつながっていました。BIツールはその橋渡し役として活用されており、想いを可視化し、浸透させていく力があると実感しました。データに基づく対話が、人と組織の成長を促す未来への希望が詰まったプロジェクトとなったように思います。
事業内容とビジョン
医療法人4U様は「口腔の病気で困らない社会」を目指し、予防型の歯科医療と医療者の育成に注力。BIツールを活用し、理念と経営をつなぐ仕組みで若手育成を推進し、業界全体の質向上と社会貢献を目指しています