支援事例

DXで北九州の共創を広げる ― 公益財団法人 北九州産業学術推進機構

作成者: イジゲングループ|2026年06月29日

公益財団法人 北九州産業学術推進機構
マネージャー 糸川 郁己 様
1980年10月生まれ

北海道札幌市出身。DX推進や人材育成に携わり、北九州市ロボット・DX推進センターや各種プラットフォームを運営。行政システム再編や補助制度設計、事業創出プログラムの企画・伴走支援など幅広い実績を持ち、地域企業の新規事業創出とデジタル化の推進に力を注いでいる。

北九州の産業を支える中小製造業。その未来を切り拓くために、異業種の力を掛け合わせた新たな挑戦が始まりました。

公益財団法人北九州産業学術推進機構(FAIS)の糸川様が仕掛け人となり、戸畑ターレット工作所の中野さん、イジゲングループの平畑さんが出会いました。

個社支援の枠を超え、地域全体のDXを推進する「DX LAB KTQ」を舞台に生まれたこの協業は、効率化にとどまらず「収益を生み出すDX」へと進化し、北九州の製造業に新しい可能性をもたらそうとしています。

個社支援から地域全体のDXへ

— FAISと「DX LAB KTQ」の具体的な取り組みや、目指していることを糸川様の想いやこれまでのご経験を踏まえて、教えてください

FAISのDX推進センターは、もともと情報産業振興を担う部署として活動してきました。DXという言葉が広がるなか、テレワーク支援や新規事業のサポート、DX推進に向けた補助金制度や人材育成講座など、幅広い取り組みを展開してきました。これまでに支援してきた企業様はのべ500社程度で、約3万社あると言われている地域の企業全体に広げていくには、個社支援だけでは限界があると感じていました。

その課題感から立ち上げたのが「DX LAB KTQ」です。私は元々システムエンジニア経験者として、受託開発中心の閉じた北九州IT産業のカルチャーに課題を感じ、知識を共有するコミュニティの力を信じて活動してきました。「DX LAB KTQ」も、ただ「やってください」と押し付けるのではなく、「この場に来ませんか?」と呼びかけ、参加者が主体的に動き出すきっかけをつくる場にしたいと思っています。

具体的には、製造業・金融機関・IT企業といった異業種連携を通じて新しいビジネスモデルを創出すること、DXの経営効果を可視化して次の投資につなげる仕組みを構築すること、そして地域のDX事例を発信して「北九州ならできる」という誇りを高めていくことを目指しています。補助金の活用だけではなく、自らの利益で次の投資につなぐループを回すことが重要だと考えていて、「DX LAB KTQ」をその突破口にしていきたいと考えています。

「出会いの場」を仕掛ける  収益を生み出すDXの実現

— 戸畑ターレット工作所の中野様と当社の平畑をおつなぎいただいたのは糸川様だとお聞きしました。その背景を教えてください。

私と平畑さんは、彼が前職のスタートアップ企業にいらした頃から付き合いがありました。退職後、これから何をすべきか悩んでいる時期に相談を受けて、FAISのDXコーディネーター(北九州市デジタル相談窓口で相談者の課題を深掘りし、専門家とのつなぎを行う役割)として活動してみないかと声をかけさせていただきました。

イジゲングループは、これまで行政案件を手掛けてきた実績があり、地域課題の解決や公共領域におけるデジタル活用に強みを持っています。また、西日本シティ銀行様のグループ会社として、地域企業への幅広い支援を行ってきた背景もあります。こうした取り組みは、FAISが進める地域DXの推進や中小企業支援と親和性が高く、一緒に動ける場を提案しました。

一方で、戸畑ターレット工作所の中野さんとも以前から交流がありました。中野さんが製造業の現場にデジタルをどう取り入れるかという課題感をお持ちなのは知っていて、平畑さんは「製造業に関わってみたいけれど、どう踏み出すべきか」と考えられていたときだったので、お二人をおつなぎすると「何かが生まれるのでは」と思い、ご紹介しました。

私の役割は「こういう場に来ませんか?」と誘い、出会いの場を仕掛けることです。そこでお互いの想いが重なれば、自然と協業に向かっていく姿を見られて嬉しく思います。

— FAISさまから見た今回の協業は、今後、北九州市の中小製造企業にとってどのような可能性があると考えられているか教えてください

これまで製造業は製造業同士でつながることが多かったのですが、今回は金融機関グループに属するIT企業と手を組むという、異業種連携が実現しました。こうした事例は、製造業だけでなく、地域の様々な業種の皆さんにとって希望の星になると思いますし、金融機関やIT企業の在り方をアップデートするきっかけにもなるはずです。

また、北九州の企業は自分の街は好きだけれど、自分たちの街に誇りを持てていないところがあるのでは、と感じています。今回のような事例が広がれば、地域企業が自社の取り組みに自信を持てたり、互いに学び合えるコミュニティが強化されていったりするのではないかと期待しています。個社支援を超えて、地域全体に広がる面的なサポートを実現することで、北九州の未来は大きく変わると考えています。

ー 戸畑ターレット工作所・中野様より

私自身、長年ものづくりに携わる中で、次の世代に同じ苦労をさせてはいけないという思いを強く持っています。今のままでは日本の製造業が共倒れになるのではないか、という危機感もありますし、デジタルの必要性を感じながらも単独ではなかなか踏み出せない現実もあります。

だからこそ、平畑さんの異なる視点を持つ方が加わることで、単なる効率化にとどまらない、新しい可能性を感じました。モノを売るだけでなく、ノウハウやデジタル化の知見をサービスとして提供するという新しいビジネスモデルを一緒に実現できるのではないかと期待しています。

糸川さんが仕掛けてくださったこの出会いをきっかけに、異業種と手を組むことで「収益を生み出すDX」を実現し、北九州の製造業にとっても前向きな変化を広げていければと思っています。

ー イジゲングループ・平畑より

今回の協業を通じて、北九州の製造業を支える取り組みを広げていきたいという思いがあります。私たちイジゲングループ、戸畑ターレット工作所様、FAIS様の3者は目指す方向は同じなため、一社単独ではなく皆で協力して進めることに大きな意義を感じています。

また、DXは効率化だけで終わらせず、実際に収益を生み出す「マネタイズ可能なDX」にしていくことが重要です。企業がDXに投資すれば次の成果につながると実感し、さらに挑戦が広がっていくと考えています。最終的には、北九州にとどまらず、日本全国に「データを活用した価値」を広げていきたいです。

突破力を持った団体に  北九州の未来を創る

— 今後チャレンジしたいことや展望を教えてください

これからも大事にしていくのは「きっかけづくり」です。単に場を用意するのではなく、そこで何が生まれるかを参加者自身が考え、行動につなげていくーーその原動力となるきっかけを提供し続けていきます。

あわせて、業界ごとの課題解決には、これまで以上に積極的に関わっていきたいと考えています。行政寄りの立場だからこそ担える役割があり、「FAISがいるからこそ進む」という支援の形を模索しています。企業の自律性を損なわずに並走しながら、突破力を持った団体としての存在感を発揮していきます。

さらに、研究会や企業同士の連携を深め、「こうすれば利益につながる」と実感できる仕組みづくりを推し進めます。効率化だけで終わらず、収益向上やサービス化まで踏み込むことを大切にしたいです。

北九州の企業が持つ高い技術やホスピタリティを自社の価値として認識し、マネタイズ可能なDXにつなげるーーその延長線上で、北九州、そして日本全体の製造業の競争力を高めていきたいと思っています。

編集後記

今回のインタビューを通じて見えてきたのは、FAIS様はきっかけを仕掛ける存在として北九州のDX推進をリードしている姿でした。

製造業がモノを売るだけでなく、ノウハウやデジタル知見をサービスとして提供するという新しいモデルは、北九州だけでなく日本の製造業全体にとっても大きな可能性を秘めています。DXを効率化の手段にとどめず、「収益を生み出す仕組み」へと進化させることができれば、地域企業はもっと自信と誇りを持ち、連携を通じて次の成長を描けるのではないかと思えました。

3者を起点に、北九州から全国へ広がる挑戦がこれからどのような未来を切り拓くのかーー。今後の展開にますます期待が高まります。

事業内容とビジョン

FAISは北九州の産業振興を担い、DX推進や人材育成、相談窓口や補助制度の運営など幅広く支援しています。個別支援を超えた地域全体での共創を通じて、企業の価値を収益化や新たなビジネスモデルへと結びつけ、日本の産業競争力向上に貢献することを目指しています。